2021.08.01
(めろんNo.166掲載)
協会には、在住外国人の人権保障、多文化共生社会の実現、市民参加による地域づくりというミッションがある。現在は、それを達成するべく多言語による生活相談や居場所づくり、日本語教室、comm cafe やボランティアグループの運営とそこでの交流に向けて外国人市民が活躍できるようサポートし、多様性が息づく地域づくりに努めている。市民との協働を広く求めるためのセミナーが、5月15日、29日の両日にオンラインで開かれた。
フリーのファシリテーターとして、行政・企業の研修や市民講座、高校や大学で講師を務めている栗本さん。ファシリテーターとは進行役で、参加者に発言を促し、流れをまとめていく人のことである。今回はオンラインでのワークショップが開かれた。
まずは TAKO(他己)トークに挑戦。ペアに振り分けられ、「今、一番行きたいところ」というテーマでそれぞれが発言し、それから四人のグループになって、最初に聴いた相手の内容を紹介するのである。
次に、自分を振り返る作業として「私は…」で始まる文章を 10 個書き出す課題が続く。それから、親しい人を10 人挙げ、選んだ人物の年齢の幅、性別、住んでいる地域、職業、学歴や国籍、障がいの有無などがバラエティに富んでいるか、検証する機会が与えられた。ブラジルの教育者パウロ・フレイレによると、「人は交わる人によってできている」そうだ。筆者の亡き両親は家庭の事情から義務教育しか受けられなかったが、今回、リストに載せた人物はほぼ全員が大学を出ている。教育の機会に恵まれたことを感謝しつつ、他のあり様を加味すると、自分は似たような人とばかり付き合っているのかな、と考えた。しかし、他人の心の底は計り知れないのだから、必ずしも彼らが同質であるとは断言できないのでは、という疑問も残る。一方で、境遇が人を作るのも真実で、それぞれの立ち位置から拓かれる個性が互いに影響を及ぼし合う社会が健全なのだとわかった。
最も難しかったのが、ジャムボード(Jamboard)。グループごとに、画面上でいろいろな文章が書かれた 16 枚のボードを、内容がアウトかオーケーかで振り分けるのである。誰が読んでも差別的な表現はともかく、「さすが!〇〇はブラジル出身やもんね。サッカーうまい!」「わたしも外国人の友達がほしい」「中学校の公民の授業で先生が『18 歳になったらちゃんと選挙に行きましょう』」、「「タイの方なんですね! タイ語、しゃべってみてください~」」など判断が難しい文言もあって、グループによって仕分け方も違っていた。外国人とは、どういうイメージか。日本で生まれて日本語しか話さない外国ルーツの人もいるのだから、外見のみでの判断は難しい、との意見が出た。
栗本さんは言う。「『マイクロアグレッション』とは、ささいな、見えにくい攻撃のこと。言った本人の意図は問わず、言われた側が、紙で指を切るように、血は出なくてもその小さな傷の重なりでダメージを強く受けることがある。マジョリティとは、『気づかずにいられる人』のことである。そうではなく、支援する人が味方として非当事者でありながら問題を理解し、共感をもって行動に移したい。マジョリティが社会のあり方を変える必要がある。」(山下)
2日目につづく