2022.02.26
(めろんNo.174掲載)
記憶に新しい2018年の大阪北部地震。豊川南小学校には130名を超える外国人市民が避難した。地域の情報が得られないままSNSなどに頼らざるをえなかった実情を踏まえ、箕面市は大阪府で初めて「外国人防
災アドバイザー」の養成・認定を始めた。研修や啓発企画の実施を通して、防災の知識や関心を高くもった外国人市民が増えることで、地域全体で自助・共助の力を高めることが目的だ。今回は「防災ウィーク」として1月11日から17日、6つの日本語教室で授業時間を割いてアドバイザーたちが制作した防災動画によるミニ講座が開かれた。
日本語教室でミニ防災講座
今回の動画は、5人の防災アドバイザーの紹介、備蓄品、電源バッテリー、非常食の紹介の4部仕立て。筆者は1月13日に日本語教室「あかね」での講座を取材した。
動画では日ごろから非常時に持ち出せるよう備えておくとよいものを説明する。例えば、かっぱ、カイロ、団扇、マウスウォッシュ、水につけるとふやけて広がるタオル(携帯に便利)、生理用品、レジャーシート。手回しの携帯ラジオにモバイルバッテリー、小型の太陽光パネル!これらのグッズをアドバイザーが手に取って次々と紹介する。外国人市民の視点ならではの非常食として、デーツなどのドライフルーツもあった。甘いもの辛いものなどの嗜好品など、非常時でも自分が食べ慣れた好物があれば楽しみができ、少しでも快適に過ごせる。それから、本も。慣れ親しんでいる言葉で書かれた本が手元にあれば、心慰められるものだ。あなたなら、持ち出し袋にどんな一冊を忍ばせるだろうか。アドバイザーそれぞれの経験や思いが伝わってくる内容だった。
「どこに避難すればいい?」の声も
学習者からは「自分がどこに避難すれば良いのかわからない」という声の一方で、「水、パスポート、母子手帳」など、大切なものは一箇所に置いているという周到な人もいた。日本語初級者のグループでは、さっそく「じしん、ひなんじょ、とよかわみなみしょうがっこう」などとキーワードが板書された。出身国には地震の無い学習者もいる。「机の下に潜って身を守るなど、どのような行動をすれば良いかわかった」「何よりお金とパスポート」など、確認の良い機会が得られたようだ。一方、南海トラフ地震の可能性が高いこと、津波で大阪が水浸しになる可能性もあるという話題にはピンとこない様子も見られた。日本特有の災害の知識を広める必要性が強く感じられた。
教室では箕面市の「ウェルカムパック」も配られた。これは外国人市民に転入時に市役所で渡される冊子(英語、中国語、韓国語、ベトナム語、インドネシア語)で、そこには《救急・医療安心カード》がついている。切り取って個人情報を記入し、緊急時に利用しやすいような体裁になっている。学習者たちから、このカードはとても心強いサポートになるとの声があがり、更なる周知が必要だと思われた。
地域のネットワークづくりを
動画のなかでは、3日間は自力で生き延びるための水や食糧が必要なこと、不安があれば迷わず避難所に行くことなども伝えられた。気候変動で大雨などの大災害の発生率も高まる中、防災意識の啓発をすすめることがますます必要となっている。協会は災害時に多言語支援センターを設置する対応計画を持っているが、限られた人員のなかで24時間対応で情報を発信しつつ、避難所を巡回することは可能だろうか。人員確保や協会に繋がりがない人への対応も含め、アドバイザーを巻き込んでの地域のネットワーク作りが課題である。行政のさらなる取り組みにも期待したい。(山下)