2021.03.01
今から20年以上前、アメリカ国籍の父が日本語教室に通っていた頃の話である。父は専業主夫で、平日の日中、岡山国際交流センターにて熱心に日本語を勉強していたのを小学生のおぼろげな記憶の中で覚えている。当時、私は父が勉強している横で過ごしていたこともあれば、同じ建物内にある図書資料室で子ども向けのビデオを視聴して学習が終わるのを待っていたこともあった。いつもカセットテープレコーダーを持参し、教室の録音をいつも自宅で聴いていた。日本語教室の話題はよく上っていたので、お世話になっていた当時の先生の顔こそは思い出せないが、名前は今でも記憶に残っている。
私も日本語教室の担当者の一員として、どのような教室にしていくか、試行錯誤を続けている。教室をたずねてくる人も多様だ。日本で仕事をしたい人、日本語能力試験に受かりたい人、日本語の本や新聞を読めるようになりたい人、ただ雑談をしたい人、友達をつくりたい人…。正直、全員の期待に沿う教室を運営するのは難しい。「ここではないな」と感じたのか、教室に来なくなる人もわずかながらいる。そうした難しさもあるが、私は、ひとりでも多くの人を「地域社会でなりたい自分」になれるよう、背中を押すことができるような教室にしていきたいと思う。先日も、夜の教室に2年ほど通っている学習者から市内の飲食店でアルバイトを始めたという話を聞き、自分のことのように嬉しくなった。残念ながら、今月(2021 年 1 月)半ばから新型コロナウイルス感染拡大の影響により、全ての日本語教室をオンラインへと切り替えているが、ぜひ対面の教室が再開した折には、気軽に教室を覗いてほしい。また、ぜひ身近な人にもお声かけいただき、教室に誘っていただきたい。それが「地域社会でなりたい自分」になれる、最初の一歩になるかもしれない。